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加藤慶二

頻発している「弁護士の詐欺二次被害」について

先日、弁護士でもある元衆議院議員が、「非弁提携」をしたとして逮捕されるというニュースが流れました。
実はこれと似たニュースは最近、頻繁に問題になっており、昨年の12月にもありました。昨年のニュースでは、国際ロマンス詐欺をめぐり、弁護士の名義を使わせて被害金の回収業務を行わせたなどとして、東京の弁護士ほか4名を弁護士法違反容疑で逮捕されたとのことです。その事務所は約300人から回収業務の着手金として1億円超を集めていたと報道されました。

ほかにも、今年の5月にも、似ている事案がニュースになっています。

これらはいわゆる国際ロマンス詐欺にあわれた被害者をターゲットにした弁護士による二次被害という問題で、弁護士業界としては極めて恥ずべきニュースです。

国際ロマンス詐欺とは、例えば以下のようなものです。

婚活アプリを利用しているAさんのもとに、ある時、Bさんから「とても素敵ですね!ぜひつながりましょう」などとダイレクトメッセージが届きます。好感をもったAさんはBさんとメッセージを続けるように。徐々に仲良くなるうちに、あるとき、Bさんから、「投資でもしてみないか」などとメッセージがあり、Aさんが多額のお金を振り込んでしまう(銀行振り込みではなく、日本円をわざわざ換金して仮想通貨によって支払ってしまう場合もある)、というものです。

このような被害に遭ってしまった被害者は、「何とか返金を求めなきゃ。弁護士を探さなくちゃ」と考えます。そのような被害者を狙って、さらに着手金等を騙し取ろうとする被害が、国際ロマンス詐欺の二次被害です。

こういった加害者は、「うちの法律事務所であれば必ず返金いたします!」「24時間365日間対応可能!」「返金実績〇千件」などと扇動的な宣伝文句が入った広告などを使って、被害者を誘い込み、多額の着手金をもらって事件を受任します。けれど、事件の依頼を受けても、事件処理は放置され、結局、被害回収はできないままです。
弁護士がこのような広告を使うのですから、同じ法曹として許せない思いです。

もっとも、こういった二次被害のスキームに、弁護士本人が実行犯として関わっていることは少ないように思います。弁護士は自分の名義を非弁護士に貸してているだけであり、あくまで、実行犯になっているのは、非弁護士グループであることが多いでしょう。

実行犯になっていない場合には、詐欺などの罪に問われることは少ないかもしれませんが、さりとて、弁護士として、法律的な知見や知識がない人に、弁護士名義を貸すのはあってはならないことであり、それは非弁提携(非弁行為)として弁護士法に違反することになります。

従前のコラムでもご説明しましたが、そもそも国際ロマンス詐欺に遭った場合、その返金は一般的に難しいといわれています。国際ロマンス詐欺の加害者は、どこの誰だかわからず、LINEのIDしかわからないということも多く、一般論でいえば、返金が難しい類型と言えます。

(ただし、弊所にもクリプトチームを設立し、被害回復に努めています。また、銀行振り込みなどによって振り込んだ場合など、返金にこぎつけた例も報告されています)

そもそも、私は、弁護士とクライアントの付き合い方は、特殊なものであると考えています。飲食店のように、お食事を提供して終わりではなく、事件を依頼する場合には、弁護士の相性や人柄というのも重要な要素です。弁護士から耳の痛いことを言われたり、見通しが悪いことを言われることは、クライアントの立場からみれば、決していい気持ちはしないでしょうが、不利な事実を確認されたり、不利な見通しを告げることは、むしろ弁護士としては求められることです。弁護士も普通の人間ですから、目の前のクライアントの気分を害したいという人は少なく、そのようなことを言いたくはないなかで、あえてそのような可能性を説明している弁護士はかえって誠実であると思います。一方で、有利なことや断定的な見通しのみを語るのはかえって眉唾といえるでしょう。

ですから、詐欺被害に遭って、弁護士に相談して、耳当たりのよいことしかいわない弁護士は少し警戒すべきだといえます。

話を戻します。
上記のように、昨今、国際ロマンス詐欺の二次被害が横行しており、その被害者の被害回復は急務といえるでしょう。

非弁提携は単独ではなく、チームでやっている場合が殆どです。上記の例でも、おそらく、弁護士は名義だけを貸して、非弁護士がチームを組んで、多くの人から多額のお金を集めていると思われます。
そのため、もしも、国際ロマンス詐欺に遭った場合には、自分の名義を貸した非弁護士だけではなく、その他のグループに入っている人の連絡先などを探索して、返金を求めていくことになります。迅速な行動が重要です。

加藤慶二

「よい弁護士とは、どのような弁護士ですか?」と質問されることが時にあります。「知識」が重要であることは言うまでもありませんが、法知識にだけ特化する弁護士ではいけないと思っています。クライアントの方と並走できる「話しやすい弁護士」でありたいです。