政治家(特に国会議員)が政治献金(寄付)を受けた場合、それを政治資金収支報告書に記載しなければなりません。特に、特定の人から、年間5万円を超える(50,001円以上)献金をもらう場合には、献金者の氏名、住所、職業を聞いて、政治資金収支報告書に掲載しなければなりません。
また、政治資金規正法では、政治家個人の政治団体が寄付を受ける場合、個人から寄付を受けることは認められていますが、会社や労働組合から政治献金を受けることは禁止されています。
そこで、各政治家(特に国会議員)が、政治献金(寄付)の代わりとして、お金を集める手段として活用することが多いのが「政治資金パーティー」といわれています。
政治資金パーティーとは、パーティー券を買ってもらうことで、その収益(正確にいえば、パーティ―にかかった費用をひいた、その残額)を自分の政治活動の活動費に充てることを目的としたイベントです。パーティ―の題名やプログラム内容などは決まっていませんので自由です。
政治資金パーティ―はなぜ、利用されるのでしょうか。
確たるところはわかりませんが、その理由の一つ目として、政治資金パーティ―のほうが広くお金を集めやすい、と聞いたことがあります。政治資金パーティーは政治団体が主催するものですが、政治献金では5万円を超える場合には献金者の名前等が政治資金収支報告書に載るのに対し、政治資金パーティ―券の購入の場合には、20万円を超える場合に氏名などが掲載されます(政治資金規正法12条1項1号ト)。外国籍の方・企業などもパーティ―券を購入することができますので、広くお金を集めることができるのです。
二つ目の理由として、政治資金パーティ―は、「券が1000枚売れても、用意する飲食物は多くて500人程度でよいから利益率が高い」という話も聞いたことがあります。
しかし、二つ目の理由については、よく考えてみれば不合理で、もしも、券が1000枚売れれば、1000人分の飲食物を用意しなければならないはずです。それなのに、半分の500人分しか用意していないということは、残りの500人は来ないことがわかっていることになります。それはパーティ―券として購入してもらっていても、実質上は政治献金(寄付)に他なりません。そうすると、パーティ―券の購入という名前の、実質は政治献金(寄付)になりますから、(政治資金規正法では、会社や労働組合が政治献金をすることは禁止されているので)会社や労働組合がパーティ券を買っていた場合には、本当は政治資金規正法違反になるはずです。
実際にそのようなことが争われた事件もあり、平成28年7月19日に東京高等裁判所が言い渡した判決では、購入者及び主催者側「双方」が出席しないことを認識している場合には、パーティー券の購入費ではなく、寄付として扱わなければいけないとしています。
この判決からすれば、1000人のパーティー券を売っているのに、最初から500人分しか料理を用意していないとすると、主催者側も出席しないことをわかっているとも思われ、政治資金規正法違反であるように思います。ただ、誰がこないかまでしっかりと把握していることは少ないからか、実際にはあまり問題になっていないのが現状です。
ほかにも、政治資金パーティ―そのものは立食形式で開催することが多く、誰が何人来たのかについて、外部から把握することは難しいため、政治資金収支報告書に記載されている数字と実際に集めた金額に差が生じやすく、裏金が作りやすいとも指摘されているところです。
質のいい政治活動をするには、政治資金が必要になることは否定しませんが、お金の流れは透明にしなければならないことは言うまでもありません。本当は政治献金(寄付)であるのにパーティ―券収入として記載していたり、収支報告書に記載していないパーティー券収入がある場合には、政治資金収支報告書不記載ということになり、刑事罰の対象になります。