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加藤慶二

政治団体や政治家個人に関係する税金について

今日は、政治団体や政治家個人に課される税金の問題について考えてみたいと思います。

政治団体が得る収入としては、①党費・会費、②寄附、③機関紙誌の発行その他の事業収入、④借入金、⑤本部又は支部から交付された交付金収入、⑥その他の収入が想定されています(政治資金規正法施行規則7条1項)。

では、これらの収入を得たとき、政治団体には課税がされるのでしょうか。

政治団体の収入に対して課税されるとしたら、最初に思い当たるのは法人税です。収入から経費を引いた所得に一定の税率をかけて、法人税が課されるわけですが、資金管理団体などの政治団体は、所得があれば法人税が課されるのでしょうか。これに対して、答えるのであれば、法律のルールでは、「収益事業」から生ずる所得についてのみ法人税が課せられるとなっています。

「収益事業」は、法人税法2条13号・施行令5条1項のなかで34種類の事業として明記され、継続して事業場を設けて行われるものをいいます。
ここに該当した事業を行い、それによって収入があれば、その収入から経費を除いた所得が課税対象になります。

そう考えると、政治団体が寄附を受けた場合、それは「収益事業」ではないことが多いと考えられますので、法人税は課されないと考えられます。また、党費や会費をもらい受けても、それが「収益事業」にあたる場合は少ないでしょうから、法人税は課されないと考えられます。
政治資金パーティ―による所得も同じで、法人税は課されないと思います。

政治団体が飲食業などを行った場合は、その事業は、収益事業に該当することが多いように思いますので、その所得については法人税が課されることになるでしょう。

では、政治団体の名義で、自分の政治理念や政治信条を本にまとめて出版した場合はどうでしょうか。また、政治団体の名義で、Tシャツを作ったり、缶バッジを作ったりする例も考えられるところです。
本を出版する場合、法人税法でいう34種類の一つである「出版業」にあたる可能性が高いと言えます(法人税法2条13号、施行令5条1項12号)。そうすると、法人税が課されることになりそうですが、法人税施行令5条1項12号をよく読んでみると、「特定の資格を有する者を会員とする法人が会報その他これに準ずる出版物を主として会員に配布するために行うもの」「学術、慈善その他公益を目的とする法人がその目的を達成するため会報を専ら会員に配布するために行うもの」は、出版業から除くとされています。

この文言の意味は難解ですが、例えば、後援会(政治団体)が会員向けに会報を作成して、それを後援会の会員に売却するような場合を想定していると考えられます。この場合は、出版業には当たりませんので、所得については法人税の課税対象にはならないと考えられます。
このような考えを前提にすると、政治団体の名義で、政治家自身の政治理念や政治信条を本にして出版するのは、上記の文言にはあたらないように思います。したがって、本を出版して、所得が発生すれば、法人税の課税対象になると考えられるでしょう。

では、ここで話を替えて、政治団体に対して課される法人税ではなく、政治家個人に課されうる所得税について考えてみたいと思います。

政治家個人が収入を受けた場合、どのような場合に、所得税が課されるのでしょうか。所得税は、個人が収入を得て、そこから経費を引いた所得に対して、かかる税金のことです。

まず、寄附について考えてみると、政治資金規正法上、国民が政治家個人に対して、政治活動に関する現金寄附は禁止されています。有権者が政治家個人に政治活動に関する寄附をする場合には、物品で行うしかありません(政治資金規正法21条の2第1項)。
その場合、物品を金額換算して、その価額が収入金額となり、所得税の対象となります。

他に、政党は政治家個人に対して寄附をすることができますし(政治資金規正法22条の2第2項)、自身の政治団体も政治家個人に対して寄附をすることができるとされています(公職選挙法199条の5)。
これらはいずれも、政治家個人に対する雑所得扱いになると考えられていて、所得税の対象になります。
ただし、所得税の対象になるものの、政治資金の雑所得の金額は、必要経費として政治活動のために支出した費用を差し引くこととなっており、差し引いた結果、お金が余っていれば、所得税の対象になるにすぎません。そのため、残額がある場合にのみ、課税所得の対象となります。

加藤慶二

「よい弁護士とは、どのような弁護士ですか?」と質問されることが時にあります。「知識」が重要であることは言うまでもありませんが、法知識にだけ特化する弁護士ではいけないと思っています。クライアントの方と並走できる「話しやすい弁護士」でありたいです。