sasun-bughdaryan-e11Oa3kvx4c-unsplash
<span>加藤慶二</span>
加藤慶二

政治家が親族と取引をする場合の適法性を考える~政治資金の還流って何ですか?~

国会議員は、日々の活動のために、自分の事務所を地元に構えていることが多いようです。では、その事務所を、自身の配偶者だったり、自身の親族から借りている場合にはどうでしょうか。
ほかにも、何かの事務用品の発注や仕事の依頼を自分の親族企業(ファミリー企業)にお願いしていた場合、何か問題があるのでしょうか。
これは要するに、自身の親族に、契約という名目で、公金である政治資金を払っているのではないか(流しているのではないか)、私物化ではないか、という問題です。自身の親族にお金を流すことは違法なのでしょうか。

そこで、衆議院議員Aさんの政治団体が、自身の配偶者(夫または妻)であるBさんから、Bさん所有のビル一室を事務所として借りた場合、その賃料支払いが違法なのか、違法でなかったとしても問題はあるのかという事例で考えてみたいと思います(事務所を借りる場合、Aさん本人で借りるよりもAさんが立ち上げた政治団体名義で借りることが多いと思われます)。

まず、このような支払いが違法であるかどうかですが、結論からいえば、支払っている事務所の賃料が、相場の賃料から「法外に」離れていない限り、違法ではありません。

もしも、相場の賃料に比べて、賃料額が法外に高い場合には、衆議院議員Aさんが支払っている賃料と相場の賃料の差額分について、A議員はBさんに寄付をしていることになります。

その場合、差額分相当額を寄付しているということを収支報告書に書かねばなりません。それを記載していないという意味で、収支報告書不記載になり、政治資金規正法に違反します。

さらには、配偶者であるBさんが有権者であれば、有権者に対する寄付の禁止(公職選挙法199条の5)に抵触する可能性もあります。

一方で、相場の賃料に比べて、賃料額が法外に安い場合には、それはそれで困ったものです。もしも法外に安い場合には、A議員は、Bさんから相場の賃料との差額分を寄付としてもらっていることになりますので、寄付を受けたということを収支報告書に記載しなければなりません。それを書いていないということであれば、それはそれで「不記載」です。

(設定した事例からは離れますが、もしも、A議員の政治団体が後援会などで、大家さん側が、Bさんが設立した会社である場合、不記載だけでなく、政治資金規正法上の企業献金禁止にも抵触しうることになってしまいます。)

つまり、ここで重要なのは相場の賃料に比べて、法外に安いか否か、高いか否かということです。

ただ、相場の賃料に比べて、若干高い、若干低いといったことでは違法にはならないでしょう。我々が普通に家を借りるときに、似ているような物件でも微妙に賃料が異なることは珍しいことではありません。日当たり、建物の形、築年数によって、同じような場所、同じような広さ、同じような間取りでも、若干の誤差は出るものです。

ですから、相場の賃料に比べて半額であるとか、2倍であるといった場合は、「法外」に高い・安いなどとなり、法的に違法であることが疑われるでしょう。

ただ、違法でない場合であっても、それは批判の対象にならないのでしょうか。

ここには様々な考えがあります。一つには、相場の賃料を支払っているとしても、別に身内からわざわざ事務所を借りなくてもよいのではないか、それって公金を身内に流すためではないのか、結局のところ、政治資金を自分のポケットにしまってしまう行為ではないかという批判があります。

このような観点からの報道は多いように思います。

しかし、一方で、政治家が事務所を構えるときに、物件探しは難しいといえます。せっかくなら大通りに面した物件がいいですし、駅から見えるような物件がいいはずです。もしも、第三者から借りれる物件は裏通りのある物件しかなくて、一方で、配偶者が持っている物件が大通りに面していたら、大通りに面している物件を借りたいと思うはずです。

他にも、大家さんの考えによっては、特定の政党の政治家には貸さないといわれることもあり、その場合、身内がビルを持っていれば、そこから借りるしかない場合もあります。

つまり、身内から部屋を借りる場合であっても、一概に、公金を身内に流すためだ、けしからんという反論が、当たっていない場合があるのです。

この考え方は、議員が親族企業(ファミリー企業)と取引をする場合でも同じです。一見すると、公金である政治資金を親族に流しているのではないか、と思われそうですが、その契約(取引)の金額が相場からみて相当であれば、やはり違法とは言えません。
そして、もしも、親族企業が自社でしか作れない商品であったり、質の高いサービスを提供しているということであれば、A議員が親族企業と取引するのは、おかしいことではないでしょう。一方で、ライバル企業が作っている商品のほうが優れているのに、相変わらず、A議員が親族企業から劣化した商品を買っているとか、親族企業が提供するサービスがものすごく酷いにもかかわらず相変わらずA議員が親族と取引をしているということであれば、それは政治資金を身内・親族に流していると批判されても仕方ないのではないしょうか。

身内から部屋を借りる場合や、親族企業(ファミリー企業)に仕事を依頼する場合など、そのことだけでおかしいと追及するのではなく、どのような理由で身内から借りているのか、身内・親族企業と契約せざるを得ないのか、身内・親族企業はどのような商品・サービスを提供しているのか、こういった理由を注視しつつ、見極めることが必要であるといえるでしょう。

〔他にもブログ記事を書いています〕
http://kato-keiji.com/blog/category/legislator-support/

加藤慶二

「よい弁護士とは、どのような弁護士ですか?」と質問されることが時にあります。「知識」が重要であることは言うまでもありませんが、法知識にだけ特化する弁護士ではいけないと思っています。クライアントの方と並走できる「話しやすい弁護士」でありたいです。