企業・団体において、就業規則や社内制度、福利厚生を適用する場合、公的制度に則って、法律上の婚姻関係にある者や事実婚の者については、一定の福利厚生が提供されています。ただ、法律上の婚姻関係に限ることなく、ダイバーシティに対応するために同性カップルを含んで、多様な家族のあり方を応援することができます。経営マネジメント側が施策を考える際の課題について検討しました。
公的制度では、明確に異性間の婚姻または事実婚にしか適用されない制度があります。例えば、社会保険の被扶養者の範囲(健康保険法3条7項1号)は、法律婚または異性間の事実婚に限定した規定となっています。
他方、社内独自の福利厚生は多種多様で、例えば、医療費の補助、手当の支給要件などの範囲については、企業・団体単独の意思決定で、同性カップルも含めて、一定のパートナー関係にある人について、法律婚と同様のサポートを提供することは可能です。
ただ、一定の線引きをしないと、どの範囲の関係性の人を対象にするのか、ということがあらかじめ明確とはならず、公平性の観点から疑義が生じることも避けなければなりません。
そこで、一定の行政手続を経た者を対象とすることで、どの場合に適用されるか適用されないか、という一定のルールメイクをすることが考えられます。
事実婚については、住民票上、事実婚の世帯合併届の届出をしていることという要件を求めるということもあるでしょうし、同性カップルについては行政機関による同性パートナーシップ証明書を交付されていることを求めるという制度設計は、一定公的機関の関与のある証明となるため、導入がスムーズといえるでしょう。
ここから、さらに進んで、企業や団体に独自に申請をすれば適用を認めるか、という点については、経営上の判断といえます。
どのような制度を導入するにせよ、パートナー関係というものはプライバシーに関わる事項ですので、意図せず社内外に情報が拡散しないよう、企業・団体においては、人事の必要な範囲でのみ情報共有をする、という取り扱いを、改めて法律婚・事実婚・同性婚を問わず意識喚起をして、安心して申請ができる環境づくりに努めることもまた、求められます。