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竹内彰志

政治献金・寄附が禁止される場合・国や自治体と取引がある場合

属性として寄附をしてはいけない立場が存在する。

三期連続赤字の企業や、行政から一定の補助金を受けている企業は寄附ができない。また、外国勢力の影響を防止するため、外国の企業や一定の外資系企業も寄附を禁じられている。同様の理由で、日本国籍を有しない人は寄附ができない。

また、寄附の取りまとめをしようとする者は、個人であっても、企業であっても、業務関係を利用して威迫するなど不当に意思を拘束する方法であっせんする行為は禁止される。公務員が自らの地位を利用して寄附を求めたり、寄附を受けることも禁止される。

これらは全て政治資金規正法で規定されているが、政治活動の自由を保障するために、本来は寄附は自由になされるべきという要請がある。法律上は、寄附が禁じられる属性の人や企業、団体は例外的な存在という扱いになる。裏返せば、寄附ができないと規定された属性以外の者は、原則として自由に寄附をして良いことになる。

この原則と例外を理解し、民主主義の手段である寄附を活用する必要がある。

政治献金が制限される場面では、なぜ規制されるのか、どの程度規制されるのか、限界を丁寧に確認していく必要がある。以下、国や地方公共団体と関係がある者による寄附の制限について整理する。

寄附者の属性や、寄附する先との関係によって、寄附が法律上認められない典型例は、行政から補助金や出資を受けている企業である。補助金等を受けていることで、行政と特別な関係にある企業等の団体が、その特別な関係の維持または強化を目的とした不明朗な寄附は防止する必要があるからだ。具体的には、国から補助金、負担金、利子補給金などの給付金交付決定を受けた企業は、交付決定通知を受けてから1年を経過するまでの間、政治活動への寄附ができない(政治資金規正法第22条の3第1項)。なお、試験研究など研究開発、調査、災害復旧への補助金のほか、その性質上、利益として残らない補助金等は除かれている。

この点は総務省が「国から補助金等の交付を受けた会社その他の法人の寄附制限に関するガイドライン」を公表し、各府省庁で該当性の判断が行われている。

例えば、建築物の耐震改修を行う場合に生じる費用負担を補てんする補助金。あるいは、労働者のキャリア形成促進のための職業訓練費用を補てんする補助金。これらは、企業等に利益を伴わないものとして取り扱われている。すなわち、こうした補助金を受けていても、政治活動への寄附は行える。

具体的に、どの補助金を受けていると政治活動に寄附ができないのかは、補助金の給付元の役所に確認すればわかる。補助金交付決定通知にあわせて、交付を受けると寄附ができなくなる旨の連絡がなされる場合もある。不明点がある場合、特に企業団体では、必ず寄附の前に確認して、適法なかたちで行う必要がある。

次に、国から資本金、基本金などの出資・拠出を受けている企業は、出資や拠出を受けている限り、政治活動への寄附ができないことを見よう(政治資金規正法第22条の3第1項)。この規制は国に関してのものである。そのため、寄附先が市長や知事など地方公共団体の首長、地方議員、それらの候補者や政治団体である場合、寄附は可能だ(ただし、次に見る地方公共団体からの補助金を受けている場合は別途規制がある)。

地方公共団体から補助金、負担金、利子補給金などの給付金交付決定を受けた企業は、交付決定通知から一年が経過するまでの間、当該地方公共団体の首長や地方議員、それらの候補者・政治団体に対して、政治活動への寄附はできない(政治資金規正法第22条の3第4項第1号)。

また、地方公共団体から、資本金、基本金などの出資・拠出を受けている企業は、出資や拠出を受けている限り、政治活動への寄附はできない(政治資金規正法第22条の3第4項第2号)。

なお、政治資金規正法とは別に公職選挙法上の規制として、国または地方公共団体と請負契約等を結んでいる契約当事者は、国と契約がある場合は衆議院議員選挙及び参議院議員選挙に関する寄附ができない。また、地方公共団体と契約がある場合は、当該地方公共団体の選挙に関する寄附ができない(公職選挙法第199条)。

ここまで見たように、企業・団体の経営者が、組織として政治団体や政治家を応援する場合、自らの企業・団体がそもそも寄附を禁止される立場にないか、事前に確認する必要がある。せっかく良かれと思って応協力したものの、それが違法な寄附に該当すると、応援どころか当該政治家や政治団体の不祥事となってしまう。「知らなかった」では済まされないのだ。

 

情報公開のあり方や、気を付けるべき点を踏まえて政治と関わる方法とは。

政治資金についての解説の詳細は、中公新書、竹内彰志『政治資金規正法 政治活動と民主主義のルールブック』(中央公論新社、2025)へ

https://www.chuko.co.jp/shinsho/2025/06/102858.html

竹内彰志

遺言、相続、事業承継などを取り扱っており、最近は、海外在住の日本人の方向けのオンラインでの遺言作成など、リモート体制での法律相談の開発に取り組んでいます。 企業団体の広報対応、名誉毀損対応、公職選挙法・政治資金規正法といった政治案件を担当しています。 【弁護士竹内彰志ホームページ shiyoji.com 】 (http://shiyoji.com/