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半田靖史

刑事事件の「控訴」について

日本の裁判制度は「三審制」です。刑事裁判の第一審の裁判所は、事件の種類に応じて、地方裁判所又は簡易裁判所です。
第一審の判決に不服があるときは、第二審である高等裁判所に更に審査するように求めることができます。これを「控訴」といい、高等裁判所での審理のことを「控訴審」といいます。控訴審では3人の裁判官による合議体が審理します。高等裁判所の判決に不服があれば、さらに、第三審である最高裁判所に不服を申し立てることができます。これを「上告」といいます(控訴と上告を合わせて「上訴」といいます)。
なお、民事事件では、簡易裁判所の判決に対する控訴審は地方裁判所が担当しますが、刑事事件では、地方裁判所・簡易裁判所いずれの判決に対する控訴についても、高等裁判所が担当します。

今日は、上訴のうち、控訴について書いてみました。
控訴を申し立てる権利があるのは、被告人側については、有罪判決を受けた被告人本人、弁護人(第一審を担当した弁護士や第一審判決後に弁護人として選任された弁護士)、被告人の法定代理人などです。検察官も控訴を申し立てることができます。
控訴の申立ては、①第一審裁判所の法廷で判決が宣告された日から14日以内に、②その第一審裁判所(高等裁判所ではありません)に、③「控訴申立書」という書面を提出して行わなければなりません。判決宣告後に判決書を入手することはできますが、14日という期限はあくまで宣告の日から14日です。拘置所など刑事施設に収容されている被告人の方は、施設の長又はその代理者に14日以内に控訴申立書を提出してください。

控訴を申し立てた後は、不服の具体的な理由を書いた「控訴趣意書」を高等裁判所に提出しなければなりません。提出期限は高等裁判所が指定しますが、通常は、控訴の申立てから大体2か月から3か月後になるでしょう。期限までに控訴趣意書を提出しないと、控訴が認められないことになってしまいます。無事、控訴趣意書が提出されると、1か月くらい後にいよいよ控訴審の第1回公判期日が開かれます。

控訴の理由は第一審の審理・判決が誤っていることです。刑事訴訟法の377条以下に具体的に定められています。被告人側の控訴についていうと、例えば、犯人でないのに有罪になった等の「事実認定の誤り」、有罪とされた行為は犯罪にはならない等の「法律の解釈・適用の誤り」、違法捜査によって得られた証拠を採用した等の「訴訟手続の法律違反」、宣告された刑罰が重すぎるという「量刑の不当」などが多く主張されます。検察官の控訴では、無罪判決の誤りや量刑が不当に軽いことなどが主張されます。

刑事裁判では、刑の軽い罪の事件で例外的に弁護人が付いていなくても審理をすることはありますが、実際には、ほぼ全ての事件で弁護人が付いています。ご存じのように、「弁護人」には、被告人や親族が依頼した私選弁護人と、裁判所が選任した国選弁護人があります。これらの点は控訴審でも同じです。控訴審の弁護人は、控訴趣意書提出期限までの限られた期間の中で、第一審の判決や裁判記録などを検討し、関係者から事情を聴き、被告人本人と控訴の理由について十分に打ち合わせをします。そして、しっかりした控訴趣意書を作成して提出し、同時に、必要な証拠の取調べも請求していきます。
このように、刑事控訴審の弁護人は、専門的見地から、第一審判決までの刑事手続全体を検証して問題点を洗い出し、その上で刑事訴訟法の定める控訴理由に当たる誤りを主張して立証していくのです。その役割は非常に重要です。

今回が初めてのコラムですが、これから、刑事事件の上訴について、皆さんのお役に立つことを書いていこうと思っています。

半田靖史

長い間、裁判官として、刑事事件を中心にたくさんの事件を担当して参りました。いかなる事件においても、冷静かつ客観的に証拠をみることを心がけてきました。厳しい決断を迫られた事件で、判決宣告のときに声が震えそうになったこともありました。立場は異なりますが、弁護士の仕事にも、このような裁判官時代の経験は役に立つと思っています。とはいえ、弁護士としては駆け出しです。当事務所の先輩弁護士から助言を得ながら、依頼者の皆様の利益を実現すべく力を尽くして参ります。

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