民事の控訴審は一審から続く続審なので、控訴審の最終段階で高等裁判所が判断し、一審の裁判と結論が同じなら控訴を棄却し、結論が異なれば一審判決を取り消して自ら判断するのが原則です。しかし実際には、一審判決が提出されている主張と証拠に照らして正当であるかどうかを、控訴理由書で主張されている控訴人の主張に照らして、判断しているといって間違いはないと思います。
もちろん一審判決が判決自体で論理矛盾をきたしていたり経験則違反がある場合もないわけではありません。しかし、判決は1人で判断する経験を有する裁判官か3人の裁判官の合議体でなされているのでそのような場合は希少であり、多くの場合、控訴理由書で原判決がいかに不合理で不当であるか、いかなる結論が正当であるかを、的確に書けるかが勝負であり、控訴審裁判官はここを見ています。
控訴審は、一審と異なり大部分が第一回弁論で結審され判決言渡期日が指定されます。この運用について批判する向きもありますが、控訴審裁判官からすると、控訴理由書で原判決に対する疑問を持つようになれば審理を続ける必要が出てきますが、そうでなければ審理を続ける理由はなく、上記一回結審は当然の帰結なのです。この点からも、控訴審の裁判官が何を見ているかが分かると思います。控訴理由書の重要性はいくら言っても言い過ぎではありません。