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草野真人

裁判官は控訴審で何を見ているのか(民事編)

民事の控訴審は一審から続く続審なので、控訴審の最終段階で高等裁判所が判断し、一審の裁判と結論が同じなら控訴を棄却し、結論が異なれば一審判決を取り消して自ら判断するのが原則です。しかし実際には、一審判決が提出されている主張と証拠に照らして正当であるかどうかを、控訴理由書で主張されている控訴人の主張に照らして、判断しているといって間違いはないと思います。 もちろん一審判決が判決自体で論理矛盾をきたしていたり経験則違反がある場合もないわけではありません。しかし、判決は1人で判断する経験を有する裁判官か3人の裁判官の合議体でなされているのでそのような場合は希少であり、多くの場合、控訴理由書で原判決がいかに不合理で不当であるか、いかなる結論が正当であるかを、的確に書けるかが勝負であり、控訴審裁判官はここを見ています。 控訴審は、一審と異なり大部分が第一回弁論で結審され判決言渡期日が指定されます。この運用について批判する向きもありますが、控訴審裁判官からすると、控訴理由書で原判決に対する疑問を持つようになれば審理を続ける必要が出てきますが、そうでなければ審理を続ける理由はなく、上記一回結審は当然の帰結なのです。この点からも、控訴審の裁判官が何を見ているかが分かると思います。控訴理由書の重要性はいくら言っても言い過ぎではありません。

草野真人

裁判官として長く民事事件を担当してきました。中でも、熊本と新潟で関わった水俣病訴訟が印象深く、困難から立ち上がろうとする原告の姿を忘れることはありません。 1987年の熊本水俣病第3次訴訟では主任裁判官として判決を起案し、2011年の新潟水俣病第4次訴訟では裁判長として、国と原告の間で和解が成立した初めての水俣病訴訟の審理をまとめ、原告の安堵の表情が今でも記憶に残っています。 家事事件も数多く担当し、判事補時代に担当した少年事件では処遇に悩み、東京家庭裁判所後見センターや横浜家庭裁判所等で深刻な対立のある家事事件の解決に力を尽くしてきました。 民事、家事を中心としたこれまでの裁判官経験を活かし、実相に迫り依頼者の権利を最大限守る弁護活動を行います

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