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西野優花

特殊法人の事業承継

先日、『各種法人の事業承継の実務―社団・財団法人、NPO法人、医療法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人―』を共著で執筆しました。
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100105
私は学校法人部分の執筆を担当しています。

事業承継においては、事業内容によってオーダーメイドの戦略が必要です。さらに特殊法人については、事業内容以前に、特別法により特別規制がなされていることが多いため、注意をする必要があります。本コラムでは特殊法人一般に見られる特徴を概説します。

1 特殊法人の事業承継の形式

 非営利を目的とする特殊法人は、収益を構成員に分配することを想定しておらず、「持分」概念がないため、株式会社の株式譲渡に相当する出資持分譲渡ができません。
 そのため、特殊法人の事業承継の形式は大きく分けて、①役員の交代による承継、②合併による承継、③分割による承継、④事業譲渡による承継、があります。

2 監督官庁の関与

 公益性が求められる特殊法人の場合、事業承継によって法人の公益性に関わる本質的な事項に変更が生じた場合には監督官庁の認可を受ける必要があります。合併に際して、監督官庁への届出や地位承継の認可を受けなければならない場合もあります。 

3 社員資格や事業承継の相手方の制約

 公益性の観点から、特定の血縁や親族による法人支配、好ましくない社員による支配は排除される必要があります。そこで、親族理事の人数制限があるほか、営利法人等への特別の収益を図る活動を行う者が排除されています。
 法人毎の詳しい特徴や注意点については、上記書籍を参考にされるほか、弁護士にご相談下さい。

4 弁護士の役割

 特殊法人については、社会に貢献するため、相応の負担感も背負いながら運営されてきた場合が多いと思います。社会や利用者にとってなくてはならない存在であるからこそ、多くの規制や監督がなされています。
 弁護士として法律解釈やガイドラインの把握、監督官庁や関係者との折衝を行うことで、使命感をもって運営されてきた経営者の思いや理念に寄り添い、次世代への承継の一助となることを目指しています。債務を承継させず、必要な資金調達を行う観点からも、日頃から契約に携わる弁護士がお役に立てるものと思います。

 事業承継は10年程度の期間を見て計画策定することが有効です。まだ先の話だと思われる場合にも、一度、弁護士をはじめとした専門家にご相談いただき、承継課題を早い時点で把握されることをおすすめいたします。

西野優花

一般民事・家事事件のご相談を数多くお受けしています。最近、法人の事業承継に関する書籍を執筆しました。我が子のように大切にされてきた事業を守り、ベストな状態で将来に残す方法を、皆様と一緒に考えていきたいと思っています。女性経営者からのご相談も歓迎いたします。 学校法人・学校法務に関するセミナーや研修講師も多数務めています。