ビジネスモデルの適法性が確認できる。グレーゾーン解消制度について - 早稲田リーガルコモンズ法律事務所
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稲村 宥人
稲村 宥人

ビジネスモデルの適法性が確認できる。グレーゾーン解消制度について

1 グレーゾーン解消制度とは

 ビジネスモデルの適法性を確認したいと思ったときに、活用できる制度があります。産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」です。
 この制度は、事業者が実施しようとするビジネスモデルが、法令(告示を含む。)の規制対象となるか法令を所管する省庁が回答してくれるという制度です。
 実際に、違反行為の摘発を担う省庁が、書面で法令の適用に関する見解を示すため、従来世の中に存在しなかった全く新しいビジネスモデルであっても、法的リスクを侵さずに安心して事業に取り組むことができるようになります。

2 グレーゾーン解消制度の特徴

 グレーゾーン解消制度と似た制度に、「行政機関による法令適用事前確認手続」があります。この制度も、特定の法令の適用有無について確認することができる制度ですが、確認対象となる法令が限られており、それほど使い勝手が良い制度ではありませんでした。
 グレーゾーン解消制度は、法律上はすべての法令(告示を含む)について、解釈・適用の確認を求めることができることが可能となっており、どのような法的リスクにも対応可能となっています。
 また、法令適用事前確認手続は、事業者が自ら規制法令を所管する省庁に、法令解釈を確認する必要がありました。これに対し、グレーゾーン解消制度では新事業を所管する省庁(事業所管大臣と呼ばれます。)が、規制を所管する省庁(規制所管大臣とよばれます。)に確認を行うという制度となっています。
事業を所管する省庁が、いわば新しいビジネスモデルの応援者として、規制を所管する省庁と法令の解釈・適用をすり合わせるという制度を採用したことにより、事業の実態に即した法令の解釈・適用が得られやすくなっているのも、この制度の特徴と言えるでしょう。

グレーゾーン解消制度の特徴

解釈・適用の確認対象

・原則としてすべての法令(告示を含む)が対象

確認の方法

・事業を所管する大臣(事業所管大臣)が、規制を所管する大臣(規制所管大臣)に対して確認をもとめる。(そのため、事業所管大臣が、いわば事業サポーターとして、規制所管大臣と解釈の交渉をしてくれます)

3 グレーゾーン解消制度でできること

 グレーゾーン解消制度は、特定の法律や命令・告示の解釈や適用の確認を行うことができる制度です。そのため、以下のようなリスクを払拭したいときに利用が考えられます。

・自分のビジネスモデルは○○法にいう「○○業」にあたるのか

・自分のビジネスモデルで採用している方式は、○○法施行令に定められた方法として認められるのか。

4 ビジネスモデルの適法性の重要性

 ビジネスモデルを実現するためには、様々なステークホルダーの巻き込みや投資が必要になります。しかし、ビジネスモデルがひとたび「違法」と判断されれば、ビジネスを抜本から考え直す必要が生じますから、巻き込んだステークホルダーにも迷惑がかかりますし。投資も無駄になってしまいます。
 また、ビジネスモデルの適法性は上場やM&Aなど、会社が次のステップにすすむ際にも問題となるポイントです。
 実際に私が弁護士としてサポートした案件も、このように事業開始後の致命的な失敗を防ぎ、安心して事業を拡大させるために、グレーゾーン解消制度を利用する例が多いです。

5 グレーゾーン解消制度の申請方法

 グレーゾーン解消制度は、以下の事項が記載された申請書を、事業を所管する省庁の窓口に提出することで利用を開始することができます。なお、実務上は、事業を所管する省庁が、事業者のサポーターの立場から、申請書について数度アドバイスをしたうえで、正式に申請が受理されることがあります。 

 なお、申請書の雛形は経済産業省ホームページから取得できます。 

○経済産業省 新事業特例制度及びグレーゾーン解消制度の書類様式
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/detail.html
※上記の「グレーゾーン解消制度 書類様式」からダウンロードしてください。

6 グレーゾーン解消制度を利用する際の注意点

 グレーゾーン解消制度を利用する際にはいくつかの注意点があります。

(1) ビジネスモデルが新事業活動に該当するものであること

 グレーゾーン解消制度が利用できるビジネスモデルは、以下の「新事業活動」に該当している必要があります。

【産業競争力強化法第2条第3項】

この法律において「新事業活動」とは、商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動であって、産業競争力の強化に資するものとして主務省令で定めるものをいう。

【産業競争力強化法施行規則第2条】

法第2条第3項の主務省令で定める新たな事業活動は、新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のうち、当該新たな事業活動を通じて、生産性(資源生産性(エネルギーの使用又は鉱物資源の使用(エネルギーとしての使用を除く。)が新たな事業活動を実施しようとする者の経済活動に貢献する程度をいう。)を含む。)の向上又は新たな需要の開拓が見込まれるものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがないものをいう。

 そのため例えば、犯罪行為を助長するような公序良俗違反のビジネスモデルなどは、グレーゾーン解消制度を利用することが困難です。
 また、すでに事業化されているビジネスモデルは「新たな事業活動」にあたりません。例えば、ビジネスモデルの事業化と平行してグレーゾーン解消制度を利用しようとする場合は、事業化までのスケジュールを踏まえて、いつグレーゾーン解消制度の利用を行うか、事前に検討する必要があります。

(2) 確認対象となるのは、申請書に記載された内容についてのみであること

 グレーゾーン解消制度は、申請書に記載されたビジネスモデルについて、同じく申請書に記載された「法令」の解釈・適用の確認を求める制度です。
 そのため、一度、適法との判断がなされたとしても
 ① 解釈・適用の確認を求める法令を誤っていた場合
 ② 申請書に記載したビジネスモデルが実態とは異なっていたり、規制の対象の可否を左右する重要な事項が記載されていなかったりした場合
は、結局、ビジネス上の適法性リスクが残ることになってしまうので、注意する必要があります。

7 グレーゾーン解消制度をより効果的に利用するためには

 グレーゾーン解消制度は、事業者が安全に全く新しいビジネスモデルを実践することができる、極めて画期的な制度です。ですがそもそも、自分の考えたビジネスモデルがどの法令に違反するのかわからなければ、解釈・適用の確認を行う対象が特定できません。
 グレーゾーン解消制度をより効果的に利用するためには、事業を構想している段階から、弁護士等に「問題になりそうな法律」について意見をもらっておくと良いでしょう。

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稲村 宥人
稲村 宥人

ITベンチャー・スタートアップなどの中小企業、NPO法人などの非営利法人の法的アドバイスを中心に、地方公共団体などの行政機関の顧問業務を専門としています。
企業法務においては、契約書作成・労働問題・事業承継などの一般的な法律相談のみならず、資金調達や知財戦略など、企業のお困りごとの相談をワンストップで受け付けています。
依頼者と共に歩幅を合わせて二人三脚で歩む、そんな弁護士であることを心がけています。

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