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稲村宥人

合理的配慮とは?障害者差別解消法が求める建設的対話の実現【学校運営の法務Q&Aより】

Q.ハンディキャップを持つ学生に対する合理的配慮が求められていることは知っていますが、具体的には、学校はどの程度の対応をしなければならないのでしょう
か。
A.学生が感じる社会的障壁を除去するために必要となる対応はするべきです。希望する対応が困難な場合も、代替策を提案するなどの建設的な対話を行い実現可能な対策を検討し講じるべきです。

◎障害者差別解消法が目指す社会

2013(平成25)年に成立した障害者差別解消法は、障害者基本法などで謳われていた「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される」社会の実現へむけて、社会に存在する様々な差別や社会的障壁の除去を推
進すべく定められました。その核心のひとつが、設例で問題になっている「合理的配慮の提供」です。これまで国と地方公共団体のみ義務づけられていたこの「合理的配慮の提供」は、2024(令和6)年4月1日から事業者にも義務づけられることとなりました。社会全体が社会的な障壁を除去する取り組みを行う時代が到来したのです。

◎どのような対応をすれば良いのか

とはいえ「合理的配慮の提供」といわれてもどのような対応を求められているのか解らないという方も多いと思います。このような抽象的な文言の背景には障がいの内容や程度それ自体も多種多様であるとの実情があります。そうだからこそ、配慮の内容も障がいの内容や
程度に応じて個別に検討しなければなりません。法が求めているのは、障がい者と国や地方公共団体、そして事業者が建設的な対話を行い、障がい者が感じている社会的障壁を双方が理解したうえで、必要な除去策を共に模索することなのです。
そのため、合理的配慮を求められた時には、社会的障壁の除去を求めている障がい者と対話し、何が障壁となっているかをあぶり出し、その除去のために必要な具体的施策を話し合うことが必要です。
なお、具体的な合理的配慮の提供例は、内閣府等の行政機関や業界団体がまとめて情報共有をしていますので参考にすることをおすすめします。

◎どこまでの対応をすれば良いのか

法律上、合理的配慮の提供義務が生まれるのは「その実施に伴う負担が過重でないとき」に限られています。負担の軽重は、事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か、物理的・技術的制約,人的・体制上の制約からみて実現可能性があるか、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況等の要素を総合的に考慮して決せられます。
ただし、例えば「先例が無い」や「特別扱いが出来ない」、「配慮の提供が提供者に(漠然とした事故)のリスクが生じる」「他の障がいがある人が問題無かった」などの事情は「負担が加重」と言える場合にはあたらないと言われています。これらの要件の該当性は極めて慎重に検討されるべきです。
また、「負担が加重」となる場合でもそのことを理由としていかなる対応もとらないというのでは「合理的配慮の提供」をしていないことになります。
いずれにしても、安直に「負担が加重」と断じて配慮の提供を怠ることは、法の義務に違反することになることは明らかです。合理的配慮の提供として学校側にできることは何か模索し、やはりここでも建設的な対話を重ねて、社会的障壁の除去が実現できるよう、できる限りの努力をすることが必要です。

 

この記事の内容は、『学校運営の法務Q&A』(旬報社)をもとにお届けしました。教育現場のトラブル回避や法的対応をサポートする信頼の一冊。全国の書店やオンラインストアでお求めいただけます!
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稲村宥人

ITベンチャー・スタートアップなどの中小企業、NPO法人などの非営利法人の法的アドバイスを中心に、地方公共団体などの行政機関の顧問業務を専門としています。 企業法務においては、契約書作成・労働問題・事業承継などの一般的な法律相談のみならず、資金調達や知財戦略など、企業のお困りごとの相談をワンストップで受け付けています。 依頼者と共に歩幅を合わせて二人三脚で歩む、そんな弁護士であることを心がけています。