はじめに
web3では様々な取引がブロックチェーン上で行われ、取引の都度それらがブロックチェーン上に履歴として刻まれ、結果トークンという形で表現される。ブロックチェーン上で行った取引はリアルワールドの実際経済と同様に様々な契約や条件に基づいて合意、執行されるため、その取引の形態に応じて(=結果としてのトークンの性質に応じて)法的な定めを設けている。その分類を行うとともに、その分類ごとの実際のビジネスの事例を取りまとめる。
分類
トークンを性質に応じてイーサリアムの技術規格別に分類する。数量で表現されるデータと、数量以外で表現されるデータに区分される。
- 数量で表現されるデータはお金、金券、株式などと相性が良い
- 一方で、数量以外で表現されるデータは、現物、権利、証明書などと相性が良い
これら技術規格の性質に基づいて、一義的に法体系の概念整理がなされている。
つまり、お金、金券に関しては、資金決済法により、株式に関しては金融商品取引法により規制がなされている。
他方で、現物、権利、証明書などについては、それ自体について特段法律による規制はなされていない。もちろん現物なりしたお金のようなものなどは資金決済法の規制の対象となり得るし、権利の内容については著作権法などの規制の対象となり得る。
なお、1.数量で表現されるデータをFT(Fungible Token)と呼び、2.数量以外で表現されるデータをNFT(Non-Fungible Token)と呼ぶ。
以下で、技術軸であるFT、NFTを区分した上で、そこに法律上の概念整理を重ねて、それぞれのビジネス上の用途について概観する。
ビジネスの活用例
以下ではそれぞれの区分ごとにビジネスでの活用事例を紹介する。
a)電子決済手段
法定通貨により裏付けされたブロックチェーン上のお金。価値が変動しないため、ステーブルコインと呼ばれている。
発行体は銀行などに限られ、価値を法定通貨に固定するため、日本円やUSDなどを裏側で保管している。
一般的にボラティリティが大きいと言われる暗号資産とは対照的に、価値が変動しない。そのため法定通貨と同様に取り扱うことができ、企業の決済手段としての活用が見込まれる。
b)前払式支払手段
その名称通り、現金を払い込んだことをブロックチェーン上に記録したプリペイド型のデータ。払込額を金券や回数券のように代金決済として利用することができる。
利用できる範囲の違いから以下の2つに分類できる。
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- 自社の商品の販売、サービスの対価として利用できる場合(例:スタバカード)
- 加盟店にも利用できる場合(例:図書券)
いずれも、前払支払手段⇒現金への払い戻しができない点、留意が必要。
c)セキュリティトークン
株式と同様の権利をブロックチェーン上に表現したデータ。株式と同様であるがゆえに、事業収益の分配を受ける権利や経営上の意思決定権に参画できる権利をブロックチェーン上に付与している。
d)暗号資産
ブロックチェーン上に立ち上がった新たな経済圏において機能する交換価値を有した以下のようなもののうち、お金で測定可能な経済的価値を有しているもの
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- 管理者不在のビットコイン、イーサリアムなどのパブリックブロックチェーン上の貨幣
- 特定の開発・運営者が存在するパブリックブロックチェーン上の貨幣
- パブリックブロックチェーンの上で動くアプリケーションの仕様を決める投票権
- パブリックブロックチェーンの上で動くアプリケーションのポイント
e)その他(規制なし)
ブロックチェーン上に立ち上がった新たな経済圏における交換価値をまだ有していないもので、以下のようなもの
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- マーケティングの一環で自社のユーザーなどに提供される割引ポイント(例:楽天ポイント)
- 将来価値が出るかもしれないプラットフォームやアプリのポイントでストックオプション的に機能するもの
f)NFT
ブロックチェーン上に記載された唯一無二性を有した改竄不能なデータ。唯一無二性のデータという特性から、証明書、現物、アート、会員権などあり、以下のような保存形態がある。
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- データそのものをブロックチェーン上に記録したもの
- データが格納されたサーバーのURL情報をブロックチェーン上に記録したもの
ネットワーク手数料の観点から大きなデータ容量をブロックチェーン上に記録することは難しいため、ライトなデータを保存する場合は前者。ヘビーなデータを保存する場合は後者を採用するケースが多い。