Q 仮名加工情報とは?
仮名加工情報(仮名加工情報データベース等を構成するものに限る)とは、他の情報と照合しない限り、特定の個人を識別できないように、個人情報を加工して得られる個人に関する情報のことです(個人情報保護法、以下「法」という。2条5項)。 例えば、氏名をお客様番号などのような数字で置き換え、個人識別符号が削除され、特定の個人が識別できない状態になっている情報です。
Q 仮名加工情報は個人情報か?
個人情報保護法では、「仮名加工情報である個人データ」(法41条5項)という記述や、「仮名加工情報(個人情報であるものを除く。)」(法42条1項)という記述があります。
仮名加工情報は、「個人情報なのか? 個人情報ではないのか?」という点が問題となりますが、「基本的には個人情報であるが、個人情報ではない仮名加工情報もある」と理解するのが良いと思います。
仮名加工情報の定義で重要なのは、「他の情報と照合しない限り」個人を識別できないという点です。反対に言うと、照合すれば個人を特定できるのです。
個人情報を観念するときに一番忘れがちなのは、個人情報には、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる」(法2条1項)ものも含む点です。
個人情報保護委員会は、容易照合性について、「特定の個人を識別することができる情報に割り当てられている識別子(例:顧客ID等)と共通のものが割り当てられていることにより、事業者内部において、特定の個人を識別することができる情報とともに参照することが可能な場合、他の情報と容易に照合することができると解され得るものと考えられます」と回答しており(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-19/)、会社内で他のデータベースを参照した場合に個人情報になるのであれば、マスキング情報は個人情報に分類されます。この観点から、仮名加工情報も原則としては個人情報となります。
なお、上記で記載したように、個人情報ではない仮名加工情報も存在します。例えば、仮名加工情報だけを受領した委託先や、仮名加工情報の元となった個人情報が削除された場合などがあげられます。
Q 仮名加工情報でできること、できないことは?
仮名加工情報については、下記の特別の対応が許されています。
- 利用目的の変更
仮名加工情報を作った際に作成の元となった個人情報に関して法17条1項の規定により特定された利用目的が、作成された仮名加工情報の利用目的としても引き継がれます。しかし、仮名加工情報について、利用目的の変更を行った場合には、変更後の利用目的をできる限り特定した上で、利用目的を新たに公表すれば、利用ができます(法41条4項により読み替えて適用される法21条3項、同条4項)。 - 漏洩時の対応
個人データに関しては、漏洩した場合に、個人情報保護委員会への報告、本人への通知が必要です(法26条)。しかしながら、仮名加工情報には、法26条が適用されないため、漏えい等が発生した場合でも、個人情報保護委員会への報告や本人への通知を行う必要はありません(法41条9項で、法26条を不適用)。 - 開示請求等への対応
同じく、仮名加工情報である保有個人データには、法32条~39条が適用されないため、個人データの本人は、開示等の請求等を行うことができません(法41条9項)。
仮名加工情報であっても、下記のことはできません。
- 仮名加工情報は原則として第三者提供が禁止されています(法41条6項、42条)。このため、仮名加工情報はあくまでも社内で利用するものと考えてください。(なお、委託や共同利用は第三者提供には該当しませんので、委託で委託先に仮名加工情報を提供することはできます。法41条6項、27条5項各号)
- 識別行為の禁止
仮名加工情報を取り扱うに当たり、本人を識別するために、仮名加工情報を他の情報と照合することはできません(法41条7項)。 - 本人への連絡等の禁止
個人情報である仮名加工情報を取り扱う場合、仮名加工情報に含まれる連絡先その他の情報を利用することはできません(法41条8項)。
(法令及びURLは、2024/03/29現在のものに依拠しています)