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川澤直康

大麻取締法等の改正について(及びCBDを巡る法規制について)

令和5年12月6日、大麻取締法や麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)などを改正する法律が成立しました。改正の趣旨は大麻草の医療分野や産業分野における利用推進、及び大麻の濫用防止ですが、その改正内容は大きく分けると以下の3つです。

① 大麻草から製造された医薬品の施用を可能とすること
② 大麻の不正施用の禁止及び罰則規定の制定
③ 大麻草の栽培に関する規定の見直し

①については、これまで大麻草から製造された医薬品の施用は大麻取締法によって禁止されていましたが、同法は今回の改正によって「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名前になり、このような医薬品としての使用を禁止する規定は削除されました。改正後の同法は名前のとおり、主に大麻草の栽培についての規制を規定する法律となります。一方で麻向法が定める「麻薬」に「大麻」及び「THC」を含めることで医薬品としての適切な施用が認められることになります。

 

参考(下線引用者)

大麻取締法(改正前)

第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 ・・・
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
四 ・・・

大麻草の栽培の規制に関する法律(改正後)

第四条 削除

 

②の内容は、①のとおり麻向法が定める「麻薬」に「大麻」及び「THC」を含め、これを医薬品としての施用を認める一方で、改正前には禁止・罰則規定の存在しなかった使用についても禁止し(麻向法27条)、違反した場合は七年以下の懲役に処する、と定められました(麻向法66条の2)。

そのほかにCBD製品の販売にも関連し、影響もあると思われるところでは、改正前の大麻取締法が規定する「部位」による規制から、麻向法によって直接成分である「THC」も規制する規定に改正するというものです。
これまでの大麻取締法の実質的な運用も「THC」検出の有無に基づいて行われていたことから、CBD製品の販売環境に大きな変化が起きる可能性はそれほど高くないと思われますが、引き続き注視が必要です。

 

参考(下線引用者)

麻向法(改正前)

第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 麻薬 別表第一に掲げる物をいう。
二 ・・・

麻向法(改正後)

第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 麻薬 別表第一に掲げる物及び大麻をいう。
二 ・・・
さらに別表第一の四十二及び四十三にいわゆる「THC」が追加されます。

 

③は、これまで大麻草製品の原材料採取目的で大麻を栽培するには大麻取締法上の「大麻栽培者」として都道府県知事の免許が必要であったところ、改正後は大麻草製品の原材料採取目的で大麻を栽培するには「第一種大麻草採取栽培者」としての免許を、医薬品の原料目的で大麻を栽培するには「第二種大麻草採取栽培者」としての免許の取得が必要ということになりました。
そして第一種大麻草採取栽培者が大麻を栽培する際は、「THC」が基準値以下の大麻草から採取した種子を利用して栽培しなければなりません(大麻の栽培の規制に関する法律12条の3第1項)。
CBD製品の製造を目的として免許を取得する場合は、この第一種大麻草採取栽培者の免許となりますが、取得にあたっての具体的な運用等については、現時点ではまだ不明な点も多く、今後の動向を注視していく必要があります。

 

参考(下線引用者)

大麻取締法(改正前)

第二条 ・・・
2 この法律で「大麻栽培者」とは、都道府県知事の免許を受けて、繊維若しくは種子を採取する目的で、大麻草を栽培する者をいう。
3 ・・・

大麻草の栽培の規制に関する法律(改正後)

第二条 ・・・
2 ・・・
3 ・・・
4 この法律で「第一種大麻草採取栽培者」とは、第五条第一項の規定により都道府県知事の免許を受けて、大麻草から製造される製品(大麻草としての形状を有しないものを含み、種子又は成熟した茎の製品その他の厚生労働省令で定めるものに限る。)の原材料を採取する目的で、大麻草を栽培する者をいう。
5 この法律で「第二種大麻草採取栽培者」とは、第十三条第一項の規定により厚生労働大臣の免許を受けて、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品の原料を採取する目的で、大麻草を栽培する者をいう。
6 ・・・

 

最後に、CBD製品を扱う際のその他の法的規制について説明します。
(1) 薬機法とCBD
CBDには不安や発作の治療、痛みの軽減、抗酸化作用など、様々な効果があるとされており、健康やウェルネス、美容を目的にCBD製品を使用する人もいると思います。

この点、CBD製品は薬機法上の承認を受けた医薬品ではないので、当該CBD製品について、「人の身体の構造又は機能に影響を及ぼす効能、効果又は性能がある」、要するに、「このCBD製品を使えばリラックスできます!」とか「ぐっすり眠れます!」と薬のような効果を広告することは薬機法に抵触することになります。この場合、2年以下の懲役と200万円以下の罰金のどちらか、又は両方が課せられる可能性があります(薬機法68条、85条5号)。

ここで、薬機法上でいうところの「広告」とは何か、が問題となりますが、薬機法の「広告」とは
①顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること。
②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること。
③一般人が認知できる状態であること。
とされています(平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)。
要するに、特定のCBD製品名への言及がされていなければ「広告」には該当せず、薬機法上の問題は生じません。

(2) その他の法律
CBD製品に係るその他の法律については、当該製品の属性によって無数に存在しますが、例えば、「CBD入りのケーキを製造・販売したい」ということであれば、食品衛生法や食品表示法等が関係してきます。
まず、ケーキを製造・販売するには、食品衛生法上の菓子製造業の許可が必要となりますし、原則として食品表示法で義務付けられている項目について栄養成分表示をしなければならないことになります。

CBD製品の市場はこれからもさらに成長が見込まれています。しかし、これまで見てきたとおり、大麻に含まれる化学化合物という特性上、様々な規制が存在しますし、つい先日(令和5年12月2日)にもTHCに類似した合成化合物「HHCH」が薬機法の規制対象に追加されるなど、今後も市場周辺の法的動向にはケアが必要です。
何かご不明点等がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

川澤直康

「自由」「革新」「貢献」という当所の理念に惹かれ当事務所に入所しました。依頼者の方にとって最善の解決方法は何か、依頼者の方の思いに寄り添い、その利益を最大化できるよう尽力します。よろしくお願いいたします。