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福田健治

事実婚と子ども:認知・姓(苗字)・共同親権の可能性

事実婚(?)パパ弁護士の福田です。法律婚はしていませんが、パートナー・2人の娘と楽しく過ごしています。

たまたま、事実婚で出産された方から、「子どもの苗字はどうなるの? 親権は? 婚姻届を出した方が良い?」という切羽詰まった相談を受けましたので、その回答を、私の実体験を交えながら、Q&Aで答えていきます。また、今国会で審議されている共同親権制度の導入を含む民法改正の影響についても触れたいと思います。

(なお、姓や苗字は法律上は「氏」ですが、ここでは一般的な「姓」を使います。)

 

Q 事実婚のまま子どもを育てて、何か不利益や不都合はありましたか?

A これはよく聞かれる質問で、うーんと唸りながら過去12年を振り返ってみましたが、何か具体的な不利益を感じたことはありません。子どもにも、「お父さんとお母さんは、結婚していないからほかのパパママと違って苗字が違うんだよ」と説明をし、二人とも素直に受け入れています。私やパートナーがそれについて指さされた記憶はありません(鈍感なだけかも)。子どもからも、父と姓が違うことが原因でからかわれたとかいじめられたという話を聞いたことはありません。

(違和感があるのは、時々、子どもと病院にいくと、子どもと私の姓が同じだと信じている事務の方に「Sさーん」(パートナーの苗字)と呼ばれるぐらいでしょうか。)

 

Q どうやったら「父」になれますか?

A 法律婚している場合は、出産と同時に、「母の夫」が父となります(嫡出推定)。事実婚の場合は、自動的には父が決まりませんので、認知をすることで父となることになります。

私は、子どもがまだお母さんのお腹の中にいるうちから認知をしました(胎児認知)。こうすると、出生と同時に父となり、出生届も、大手を振って「父です」と提出することができます。

*この記載について、読者の方から問い合わせをいただきました。事実婚の場合、出生の届出は母がすることとなっており(戸籍法52条2項)、出生届の届出者の欄は、母が署名する必要があります。他方、出生届には、父の氏名を記載する欄がありますが、胎児認知をしておくと、「父」の欄に氏名を書くことができます。出生後の認知だと、出生の段階では父はいないので、「父」の欄はブランクにして出生届を提出し、その後認知を届けることになります。(母の署名がある出生届の実際の提出自体は、父でも誰でも可能です。)(2024/6/28追記)

 

Q 子どもの姓はどうなるんでしょうか。

A 事実婚の場合、子どもは、出生と同時にお母さんの戸籍に入り、母の姓を名乗ることになります。

 

Q 父の姓に変更できますか?

A はい。裁判所で「子の氏の変更」の許可を得ることで、子どもを父の戸籍に移し、父の姓を名乗ることができます。特別な事情(父に法律婚している本妻がいるとか!)がなければ、問題なく許可が出ます。(これは「やむを得ない事由」が必要な戸籍法上の「氏の変更」とは異なる手続です。)

子どもから見ると自分の名前が変わることになるので、可能なら早めに手続いただいた方が、子どもの混乱が少ないかもしれません。

私たちはあまり必要性を感じていないので、子どもは母の姓のままです。

 

Q 子どもの親権はどうなるの?

A 現在の民法では、共同親権を持つことができるのは法律婚をしている場合だけです。このため、事実婚の場合は、出生とともに、お母さんが親権者となります。親権者を父に変更する場合は、裁判所で親権者変更の手続を取ることになりますが、これが認められると、今度は父の単独親権になります。

 

Q 親権がないと何か困りますか?

A これも過去を振り返ってみたのですが、親権がないことで何か現実に困った記憶はありません。夫婦で子どもの養育についてきちんと話し合いができている限り、親権がクローズアップされる機会は考えづらいです。

厳密にいうと、子どもの予防接種だけは、保護者の同意と同伴が必要で、その保護者とは「親権者」と定義されています(予防接種法2条7項)。なので、親権がない私の場合、本当は、パートナーからの委任状をもらえわないといけないようです。実際にはそこまで厳密には運用されていないようで、かかりつけ医は私の顔を知っていることもあり、今までは私の同意のサインと同伴で事足りています。(今後、共同親権制度が導入され、親権の行使をめぐるトラブルが増えると、緩やかな運用が維持されるか分かりませんが。)

また、今まで大きな病気をしたことがないので分かりませんが、大きな手術をするとなると、もしかすると親権者の同意を求められる場面が出てくるのかもしれません。

 

Q 共同親権が導入されると聞いたのですが、事実婚の場合でも共同親権に変更できるようになるのですか?

A 現在、国会で、共同親権の導入を柱とする民法の改正案が審議されています。議論の中心は離婚後の共同親権ですが、法案の中には、認知した場合の共同親権も含まれています。今提案されている条文は以下のとおりです。

民法819条4項
父が認知した子に対する親権は、母が行う。ただし、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
戸籍法78条
民法第819条第3項ただし書又は第4項ただし書の規定によつて協議で親権者を定めようとする者は、その旨を届け出なければならない。

このように、今回の法案は、離婚したカップルだけでなく、事実婚のカップルにも、共同親権を認めるものとなっています。事実婚の場合は、多くは母の単独親権となっていることと思われますが、法案が成立した場合、届出だけで共同親権に変更できるようになります。(施行日は交付の日から2年以内とされています。)

私たちも、改正法が施行されたら、共同親権の届出をしようかと検討中です。

福田健治

1.弁護士にとって最も重要なことは、依頼者の悩みや想いを丁寧に伺うことだと考えています。じっくりと相談してください。最善の手段を一緒に考えましょう。 2.私は、法的手段を通じて、多くの価値観が共存し、互いに尊重される社会を目指しています。 3.原発事故の被害救済に力を入れています。事故や放射能による精神的苦痛、経済的損失、風評被害など、お気軽にご相談ください。 4.海外留学の経験があり、英語での相談、英文チェック、外国法調査などに対応可能です。