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中国語対応チーム

台湾におけるホワイトカラー外国人への新退職金制度の適用拡大:2026年6月末までの適用選択のタイムリミットが迫ってくる

台湾で働く外国人、特に「ホワイトカラー」と呼ばれる専門人材の方々にとって、2026年1月1日より大きな法改正が施行されました。
海外からの優秀な人材を呼び込み、台湾での長期定住を促すため、「外国専門人材招聘と雇用法」(中国語:「外國專業人才延攬及僱用法」)の大幅な法改正が行われました。これまで、台湾の「労働退休金新制(新制度)」は、原則として台湾籍の労働者や、永住権(永久居留証)を持つ外国人に限定されていました。しかし、2026年1月1日より、永住権を持たない一般の「外国人専門人材」も、この新制度の適用対象となりました。
日本駐在員や現地採用のホワイトカラー外国人を雇用している使用者は特にご留意いただきたいです。本稿では、この制度改正がもたらすメリット・デメリット、企業側が取るべき対応等について解説します。

 

制度改正の背景

もっとも、台湾には「旧制度(労働基準法に基づく退職金)」と「新制度(労働退休金条例に基づく退職金)」の2つの退職金システムが存在します。

旧制度:同一企業に長期間(通常は15年〜25年以上)勤務しなければ受給資格が得られず、転職すると勤続年数がリセットされるという欠点があります。
新制度:2005年7月に導入。雇用主が毎月、給与の6%以上を労働者個人の専用口座に積み立てる「確定拠出型」です。個人口座のため、労働者が転職しても影響は受けず、60歳になれば受給できます。

これまでの永住権を取得していない外国人専門人材は、「旧制度」退職金しか適用されませんでした。しかし、現代のキャリア形成において一社に20年勤め続けるケースは稀であり、多くの外国人が退職金を受け取れないまま帰国や転職をするという問題がありました。また、雇用主にとって、職場全体が「新制度」退職金を適用しているにもかかわらず、外国人専門人材1人でも雇用した場合、台湾銀行に退職金積み立ての専用口座を開設し、毎月に一定比例の金額を積み立てなければならないという手間もありました。

 

2026年1月からの主な変更点

  1. 適用対象範囲の拡大
    2026年1月1日以降、新たに雇用される、あるいは現在雇用されている「外国人専門人材」および「外国人特定専門人材」は、永住権の有無にかかわらず、原則として「新制度」退職金の強制適用対象となります。これにより、約5万人以上の外国人専門人材が適用対象になる見通しです。
  2.  企業の積立義務
    雇用主は、対象となる外国人労働者の月額給与の「6%以上」を、労働保険局が管理する個人の退職金専用口座に毎月積み立てる義務を負います。なお、これは給与からの天引きではなく、雇用主の追加負担となります。
  3. 労働者本人の任意積立(節税メリット)
    労働者本人も、給与の6%を上限として自ら積み立てることが可能です。この本人積立分は、その年の個人総合所得額から控除されるため、節税対策としても有効です。

 

既存の外国人専門人材への対応:6カ月の猶予期間と選択権

現在すでに台湾の企業で働いている外国人専門人材については、自動的に切り替わるわけではなく、一定の選択権が与えられています。新法施行(2026年1月1日)から6カ月以内(2026年6月30日まで)に、書面で「旧制度を継続したい」と申し出ない限り、自動的に「新制度」へと移行します。
期限までに意思表示をしなかった場合、2026年7月1日から自動的に新制度適用となり、また雇用主は同年7月15日前に労働保険局に申告し、1月1日からの退職金を遡及的に積み立てる必要があります。
なお、勤続年数の取り扱いについて、旧制度時代の勤続年数は保留されます。将来、同じ会社で旧制度の受給要件を満たした場合、あるいは定年退職や解雇の際に、その期間分の計算が行われます。また、労使合意があれば、旧制度期間の勤続年数を清算(一括払い)して新制度に一本化することも可能です。

 

雇用保険(就業保険)の適用拡大

今回の改正では、退職金だけでなく「雇用保険(就業保険)」についても変更があります。 2026年より、永住権を持つ外国人労働者は、雇用保険への加入が強制化されます。これにより、失業給付、職業訓練生活手当、育児休業手当などの受給が可能になります。これまで外国人は、台湾人の配偶者がいる場合などを除き、こうしたセーフティネットから外れていましたが、今回の改正で保障の幅が大きく広がります。

 

日本人読者が注意すべきポイント

【企業・経営者・人資担当の方へ】

  1. 人件費増の予算化:2026年から、外国人専門職1人あたり給与の6%の追加コストが発生します。次年度以降の予算計画に組み込む必要があるでしょう(なお、旧制度において積立金口座は雇用主名義とは異なり、新制度では従業員個人名義の口座になるため、最終的に口座を閉鎖して余った積立金を取り戻すことはできません。)。
  2. 社内説明と書面通知:既存の日本人出向者や現地採用者に対し、制度の変更を周知し、旧制度を維持するか新制度に移行するかの意向確認を期限内に行うプロセスが必要です。
  3. 法的コンプライアンス:申告を怠った場合、遅延損害金や過料が科されるだけでなく、企業名が公表されるリスクもあります。

【台湾で働く外国人専門人材の方へ】

  1. 適用制度の確認:新制度になれば、積立金は個人の口座に紐付いているため、転職しても消えることはありません。ご自身に適用される退職金制度を雇用主にご確認しておくことをお勧めします。すでに台湾企業で働いている外国人専門人材の方は、2026年上半期の6ヶ月間の選択期限にご留意ください。
  2. 受給条件: 原則として60歳から受給可能です。台湾を離れる際(帰国時)に一括で引き出せるかどうかについては、現時点の規定では「60歳到達」が基本条件ですが、今後の運用細則を注視する必要があります。
  3. 自発的積立の検討: 台湾での所得税率が高い方は、6%の自己積立を行うことで課税所得を抑えることができるメリットがあります。

 

まとめ

今回の法改正は、日系企業にとっては、人事コストが増るという側面は否めませんが、一方で外国人専門人材を長期的に繋ぎ止めるためのインセンティブにもなります。
2026年1月より施行した大きな退職金制度の転換に関し、自社における増える人事コストや対応への不備有無については、今一度ご確認しておきましょう。

中国語対応チーム

中国語スタッフが在籍。ネイティブ言語での法律相談から、日中両国の商慣習を踏まえた契約交渉・進出支援まで、質の高いリーガルサービスを提供します。