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中国語対応チーム

台湾のパワハラ防止法が2026年7月本格始動!企業が知るべき5つのポイント

台湾では、2024年末から2025年にかけて、いわゆる職場でのいじめ・パワーハラスメント(中国語:「職場霸凌」。以下「パワハラ」という。)の定義及び雇用主としての防止・対応義務の立法化に関する議論が進められ、ようやく「職業安全衛生法」(以下「職安法」という。)において大幅な法改正がなされました。

2026年7月1日より、「職業安全衛生法」改正法が正式に施行され、これに伴い、中央主管官庁である労働部も6月23日に、その下位規則である「職場パワーハラスメント防止措置準則」(中国語:「職場霸凌防治準則」)及び「地方主管機関による最高責任者の職場パワーハラスメント事件申告受理処理規則」(中国語:「地方主管機關受理最高負責人職場霸凌事件申訴處理辦法」)を公布しました。これにより、パワハラ防止に関する新たな規定が本格的にスタートします。

本稿では、改正法に基づき、台湾に進出している日本企業の経営者や人事担当者が押さえておくべきポイントについて解説します。

1.パワハラの定義の明文化(職安法第22条の1第1項)

今回の法改正では、「パワハラ」の法的定義が明確化されました。台湾では、もともとパワハラに関する明確な法律規定がなく、「職業安全衛生施設規則」において、パワハラは「職場内での不当な侵害(身体的・精神的な攻撃)」として、雇用主はこれらを防ぐための措置を講じることが義務付けられているに留まっていました。

今回の法改正により、職安法第22条の1第1項において、パワハラの定義が以下のように明確化されました。

「本法において職場でのパワーハラスメントとは、労働者が労働場所において職務を執行する際、その事業単位の人員が職務や権勢などの関係を利用し、業務上の必要かつ合理的な範囲を超えて、継続的に冒涜、脅迫、冷遇、孤立、侮辱、又はその他の不適切な言動を行うことにより、その心身の健康に危害を及ぼすことをいう。但し、情状が重大なものについては、継続的に発生することを必要としない。」

留意すべきは、要件について、原則として「継続的」な言動が対象となりますが、「情状が重大な場合」は、一度限りの行為であってもパワハラと認定される可能性があります。また、「業務上の必要かつ合理的な範囲」を超えているかどうかの判断は、社会通念に照らし、その行為と仕事に関連性があるか、合理的であるかなどが総合的に考慮されます 。

具体的に、以下のような行為が含まれます。

・特定の人を意図的に排除したり、重要な会議やイベントに参加させないといった行為。

・職務上の権限を濫用し、達成困難な高い目標を課す、あるいは逆に能力に見合わない低いレベルの仕事を命じるといった行為。

・職務上の権限を利用した嫌がらせ、特定の人に対する業務の妨害や意図的な阻害など。

2.雇用主が負うべき「法的義務」の具体的内容(第22条の1、第22条の2)

今回の改正法により、雇用主には主に以下のパワハラに対する予防と対応義務が課せられます。

  1. 予防措置の構築義務(職安法第22条の1第2項)

従業員数に関わらず、すべての雇用主はパワハラを防止するための措置を講じる必要がありますが、一定規模以上の企業には下表のような義務が加わります。規模が大きい企業ほど、より完全な制度の構築が求められます。

  • 雇用主が事業の規模に応じて講じるべき防止措置一覧表
法定義務事項 事業の規模(雇用労働者数)
10人未満 10人~29人 30人~99人 100以上
予防措置を講じ、パワハラを受けた労働者に対して有効かつ適切な措置をとること
通報窓口の設置
「防止措置、通報及び懲戒に関する規範」の策定
通報対応チームの設置
外部専門家を招いた調査チームの編成
外部専門家を招いた再調査(不服申し立て)チームの編成

*労働部公告(https://www.mol.gov.tw/1607/1632/1633/93088/)に基づいて作成。

✔:法定義務事項

〇:準じて対応することが可能な任意事項

  1. 即時対応義務(職安法第22条の2第1項)

雇用主はパワハラの疑いを知った際、下記の場合に応じて「直ちに有効で適切な措置」をとる義務があります。

被害者からの通報を受けた場合 パワハラの再発防止措置、被害者への相談支援など(心理カウンセリングなど)、調査の実施、加害者への適切な懲戒又はその他処理。
被害者の通報によらずに知った場合 事実関係の確認、被害者の意向に沿った通報・相談支援など、適宜な勤務内容又は勤務場所の調整。
  1. 調査及び行政主務官庁への報告義務(職安法第22条の2第2項、第3項)

雇用主による調査は「客観・公正・公平」である必要があり、当事者の陳述機会を確保し、利益相反を回避しなければなりません 。また、従業員100人以上の企業では、調査チームの半数以上を外部の専門家で構成する必要があります。

さらに、雇用主はパワハラの通報を受理した翌日から7営業日以内に、中央主管官庁である労働部が指定するウェブサイトへ案件を登録しなければならず、かつその処理結果を報告する義務が新設されました。

3.最高責任者が加害者の場合(職安法第22条の3)

企業の「最高責任者(CEOや董事長など)」がパワハラの加害者であるケースにおいて、社内窓口では最高責任者に対して中立的な調査が期待できないという懸念があります。

この懸念を解消するための措置として、最高責任者が加害者側である場合、労働者は企業内の窓口(通報ルート)を通さず、直接「地方主管官庁(各市・県の労働局など)」へ通報することができます。なお、この場合の通報期限は、パワハラ行為が終了してから3年以内、又は退職から1年以内と定められています。

4.違反した場合の罰則と企業リスク

今回の改正法に定められている法的義務に違反した場合、企業及び責任者個人に対して下記の罰則が適用されます。

  1. 最高責任者への個人罰:最高責任者によるパワハラが認定された場合、個人に対してニュー台湾ドル1万元以上100万元以下(約5万〜500万円)の過料が科されます。
  2. 企業による義務違反に対する処罰:予防措置の未策定や、通報後の対応不足がある場合、(違反規定により、まず主管機関から是正を命じられ、それに従わない場合は)ニュー台湾ドル3万元以上75万元以下(約15万〜375万円)の過料が科されます。さらに、雇用主がハラスメント防止義務を怠った結果、労働者がうつ病などの深刻な職業病(心身の疾患)を発症した場合、ニュー台湾ドル5万元以上300万元以下(約25万〜1,500万円)の過料が科されます。なお、主管官庁は、企業の規模、性質、又は違反の重大性に応じて、法定最高額の2分の1まで過料を加重することができ、つまり、最大450万台湾元(約2,250万円)が科されるリスクが存在します。
  1. 企業、責任者名の公表:以前は「公表できる」とされていた違反企業の名称、代表者氏名、違反内容、罰金額について、改正法では「公表しなければならない」と改正されました。

5. 企業がとるべきアクションプラン

今回の職安法改正は、企業に対してより厳格かつ実務的な対応を求めるものです。雇用主が日頃から適法なパワハラ防止措置及び対応体制を整備しているかが、今後ますます重要なポイントとなります。

  1. 就業規則など社内規程の見直し:台湾の現行法及び改正法に適合しているか(従業員数に応じ「パワハラ防止措置、通報及び懲戒に関する規範」が設けられているか)、専門家の弁護士などのチェックを受けることを推奨します。
  2. 通報窓口の設置:従業員数に応じて社内の通報窓口、及び通報対応・調査体制が整備されているか、早急に見直すことを推奨します。
  3. 教育訓練の実施:日本から派遣された管理職や駐在員が、「指導」を行うつもりであっても、それが台湾法上のパワハラに該当するリスクも存在します。現地の法律に即した管理職研修などを定期的に実施することを推奨します。

中国語対応チーム

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