生成AIが賑わいを見せていることに伴い、開発者側・利用者側を問わず様々なクライアントから、生成AIと著作権の問題について質問をいただきます。
生成AIの発展に伴い複雑な議論が発生しうるものではありますが、ここではそういった専門的な議論をさけ、日本における生成AIにまつわる著作権の考え方を紹介したいと思います。
まず、生成AIに関する著作権の議論で問題とすべき場面は二つあります。一つ目が生成AIを開発する段階での著作物の利用場面で、二つ目が生成AIを使って何かしらのアウトプットが出てきた場面です。
1.生成AIを開発する段階
最初の生成AIを作成する段階での著作物の利用についてですが、結論からお伝えすると、日本では著作権法第30条の4に基づき、生成AIを作成する際に著作物を著作権者の承諾なく利用することができます。
情報解析のための使用であれば、著作物が制作された本来の目的とは異なると考えられることから法で認められているものです。
AI開発をする際には、膨大な量のデータを収集し、学習させる必要があります。この膨大な量のデータを収集し情報解析のために使用する際に、著作権者の承諾が不要とされている点は、生成AIの発展という意味からはプラスに評価されうるものといえますが、生成AIの発展に伴い著作物が大量に利用されていることを考慮すると、本当に著作権者への補償や対応が全くなされないのでよいのか、という点についてはやや落ち着きの悪さを感じます。
なお、データベースそのものが著作物とされているような場合(データセット)、情報解析著作物としての利用に加えて、著作物を読んだり観賞したりする目的が併存しており著作物が制作された本来の目的で利用されている場合には、著作権者の承諾が必要となります。
2.生成AIを使って出てきたアウトプットの扱いについて
次に生成AIを使ってアウトプットが出てきた場合、そのアウトプットは誰の著作物になるのでしょうか。
まず、AI利用者が簡単な指示に基づいて生成AIが自律的に生成したアウトプットの場合には、そもそも誰かの思想や感情などが表現されているものではないので、「著作物」に該当しません。
しかし、AI利用者が細かな指示を行い、もはやAI利用者の思想や感情などが表現されていると評価できるような場合には、生成AIによって作られたアウトプットであっても、AI利用者の著作物になります(創作意図と創作的寄与が必要といわれています)。
つまり、単に生成AIが生成したアウトプットなのか、AI利用者の寄与が大きくなされたアウトプットなのか、という観点から著作物かどうか、という判断をすることになります。
もちろん、生成されたアウトプットが既存の著作物に似ている場合は、既存の著作物への著作権侵害という問題が生じますので、その点については注意が必要です。