日本で一般的に見られる非正規雇用における有期労働契約(例えば契約社員)は、台湾では労働基準法(以下「労基法」という)関連法令に抵触し、契約期間に関する合意の部分は無効と認定される可能性があります。この場合、当該有期労働契約は労基法の強行法規の効力により無期労働契約を適用し、雇用主による一方的な契約終了には厳格な解雇の法定事由を遵守しなければならず、かつ法に基づいた解雇手当の支払いが必要な場合もあります。このような紛争は、特に雇用主が有期労働契約を繰り返し更新した後に、期間満了により契約を終了しようとする際に、労働者が不法解雇や解雇手当の支払いを争った場合に顕在化することが多く見受けられます。
労基法第9条第1項には、「継続性」を有する仕事は、期間の定めがない労働契約としなければならず、「臨時性」、「短期性」、「季節性」または「特定性」を有する仕事に限り、期間の定めがある労働契約を締結することができると規定されています。
つまり、台湾では無期労働契約が原則であり、有期労働契約は法律で定められた要件を満たす場合に限って、例外的に認められるということです。
それぞれの有期労働契約の類型の定義については、労基法施行細則第6条に下記の通り規定されています。
- 臨時性の仕事:予期できない非継続性の仕事で、その仕事期間が6ヶ月以内のもの。例えば、臨時の代理警備員(新北地方裁判所2024年労訴字第93号民事判決)など。
- 短期性の仕事:6ヶ月以内に完成すると予期できる非継続性の仕事。例えば、短期イベントのアパレル販売スタッフ(台北地方裁判所2024年労訴字第153号民事判決)など。
- 季節性の仕事:季節性の原料、材料の出回りまたは市場販売に影響される非継続性の仕事で、その仕事期間が9ヶ月以内のもの。例えば、果物の収穫、季節性原料の加工処理(行政院労働委員会(現在の労働部)1998年台労資二字第13495号通達)など。
- 特定性の仕事:特定期間中に完成できる非継続性の仕事。その仕事の期間が1年を超えるものは、主務官庁に届け出なければならない。例えば、特定の終了期間のある建設工事・プロジェクト、研修医研修期間の契約(労働部2019年労働関二字第1080127450号通達)など。
労基法第9条第1項に違反して労働者と有期労働契約を締結した場合、民事上、労働者から不法解雇や解雇手当の支払が争われるリスクのほか、行政官庁から行政罰を受けるリスクも存在します。労基法第9条第1項に違反した場合、行政官庁はニュー台湾ドル2万元以上30万元以下(およそ日本円10万円以上150万円以下)の過料を科し(労基法第79条第3項)、また、過料に処したときには、その違反事業者または事業主の名称、責任者の氏名が公告されます(労基法第80条の1)。
ちなみに、高齢者の労働市場への参入を促進するため、実務上、定年退職後の労働者を有期労働契約の形で再雇用するケースが多い実情に鑑み、「中高齢者及び高齢者就業促進法」(中国語:「中高齡者及高齡者就業促進法」)第28条には、65歳以上の労働者との間には、有期労働契約を締結することができると明確に規定されています。
前述したように、台湾では有期労働契約を締結するには法的要件を満たさなければならず、要件を満たさなかった場合、当該有期労働契約の契約期間に関する合意は無効と認定され、無期労働契約を適用します。従って、有期労働契約の有効性に関する紛争を避けるために、台湾で事業を運営する際には、労働者と有期労働契約を締結する前に、台湾の弁護士に相談した上で慎重に検討を進めることが望ましいと考えられます。

