2022年11月25日

川上資人弁護士と戸田善恭弁護士らが代理人を務めるウーバーイーツユニオンの不当労働行為救済申立事件において、東京都労働委員会は、ウーバージャパン社及びウーバーイーツジャパン社に対して、団体交渉に誠実に応じなければならないとの命令を発しました

ウーバーイーツユニオンは、2019年10月にウーバージャパンとウーバーイーツジャパンに対して団体交渉を申し入れましたが、会社が団体交渉を拒否したため東京都労働委員会に団交応諾命令を求めて不当労働行為救済申立事件を申し立てていました。
同事件について、2022年11月25日、東京都労働委員会は、同社らに対して、ウーバーイーツユニオンの団体交渉に誠実に応じなければならないとする命令を下しました。

本件は、日本で初めてプラットフォームで働く労働者が労働組合を組織し、プラットフォーム企業に対して労働環境改善を求めて団体交渉を申し入れた事件であり、重要な事件です。
ウーバーイーツユニオンは、本救済命令事件を通して、よりよい労働環境の実現を目指しています。

最後に、本申立事件で弁護団が提出した最終準備書面から、本事件の意義について述べた結論部分を紹介します。

第7 おわりに
本件は、2019年10月3日に結成されたウーバーイーツユニオンが、働く仲間の労働環境を少しでも良くしようと、被申立人に対して団体交渉を申し入れたところ、現在に至るまで被申立人らに違法に団体交渉を拒否されているという不当労働行為事件である。
また、日本で初めてプラットフォームワーカーの労働組合が申し立てた事件であり、被申立人らの配達員のみならず、全てのプラットフォームワーカーの地位の向上につながる事件としても重要な意味を持つものである。
労働組合法における労働者とは、団体行動権の行使を担保とした団体交渉法制による保護が保障されるべき者を指すと解されている。
この点、申立人組合員及びウーバーイーツ配達員らは、2019年4月頃から配達した距離に対して払われる報酬額が少ないという問題に直面し、配達員個人がそれぞれ被申立人ウーバージャパンに申入れをしていた。しかし、被申立人ウーバージャパンは「誤差の範囲」などの回答をするのみで、一切まともな対応を行わなかった。
このような状況を経て、個人で申入れを行っていても埒が明かないと考えた配達員らが集まり、日本で初めてのプラットフォームワーカーによる労働組合として結成されたのが、申立人組合である。
申立人組合は、2019年10月8日、以下の事項について団体交渉を申し入れた。①事故の補償、②支払われた報酬額の誤りについて、③アカウント停止、④報酬の制度について、⑤アプリの仕組みについて、⑥配達サービスの向上、⑦紹介料不払いについて。これらは、配達員らが、被申立人の配達員として配達業務を遂行する過程で直面した問題であり、被申立人ウーバージャパンが現実的かつ具体的に支配・決定することができる事項であるにもかかわらず、個人で被申立人ウーバージャパンに話し合いを求めても全く相手にされなかった問題である。
個人と企業の間には圧倒的な交渉力格差があるため、そのままでは公正な取引関係の構築は困難である。被申立人らが、配達員個人の申立てに対して一切まともな対応を取らなかった事実は、このことを端的に示すものである。
その格差を埋めるため、団体行動権の行使を担保とした団体交渉法制による保護を保障し、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」を目的とするのが労働組合法である。
本件は、まさに、同法の適用によって団体交渉法制による保護を保障し、配達員が被申立人らとの交渉において対等の立場に立つことを促進することにより、被申立人らの配達員の地位を向上させることが求められる事案である。また、そこにとどまらず、全てのプラットフォームワーカーの地位向上につながることが期待される事案といえる。
申立人組合は、貴委員会に対して、すみやかに被申立人らに対して団交応諾命令を出されるように求める。
以上

https://mainichi.jp/articles/20221124/k00/00m/040/438000c

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