2025年11月19日

川上資人弁護士らが原告代理人を務める、新宿警察署ネパール人留置中死亡事件国家賠償請求訴訟において、2025年11月19日、東京高等裁判所は原告勝訴判決を下しました。

新宿警察署で留置中に死亡したネパール人のアルジュンさんの遺族が東京都と国を相手に提訴した国家賠償請求訴訟において、東京高等裁判所は、被告都の責任を認め、原告勝訴判決を下しました。

2017年3月13日、東京都新宿区百人町で遺失届が出ていたクレジットカードを所持していたとして、占有離脱物横領罪の容疑で新宿警察署に逮捕・留置されたアルジュンさんは、3月15日午前6時半の起床時、布団を正しくしまわなかったとの理由で、反抗的であるとされ、保護室に収容されました。そして、ベルト手錠、新型捕縄、ロープという3種の戒具を身体に装着され、その約3時間後に死亡しました。

本件は、無抵抗のアルジュンさんを保護室に収容した上で、戒具装着要件が認められないにもかかわらず漫然と戒具を装着し、アルジュンさんの血流を阻害して死に至らしめた、という極めて悪質な事案になります。

東京地裁は、原告勝訴判決であったものの、被告都の過失は病院に搬送しなかったことのみとし、損害賠償額も100万円とする極めて不当な判決でした。
これに対して、原告は、①保護室収容後もなお戒具装着要件が存続していたかについての判断遺脱、②100万円という極めて低廉な賠償額の認定が違法であるとして控訴していました。

東京高等裁判所は、これらの控訴理由に対して、①「保護室に収容しただけでは法213条1項に定める事由を防止することが困難であると認められる場合には、被留置者に対して戒具を使用することができるものと解される。」と述べて、原告の主張を認めました。また、②についても原審判決を変更し、3942万9698円の損害賠償を認めました。

警察の留置業務の現場では、アルジュンさん事件のような保護室に収容した上での違法な戒具装着行為が横行しており、2022年12月には、愛知県岡崎警察署、大阪府浪速警察署と立て続けに保護室収容後の戒具装着による死亡事件が発生しています。

今後は、この東京高裁判決に基づき、保護室収容後の戒具装着は原則違法であるとの認識を社会に広め、警察の留置業務の根本的改善を促す必要があります。

今後とも、皆さまのご支援ご協力をどうぞよろしくお願い致します。

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