Q.学校の文化祭で演劇の上演を行うクラスがあります。演劇の脚本は市販されているものを使用しますが、著作権者の許諾を得る必要はありますか。また、そのまま使うと長すぎるため、持ち時間に合わせて改変する予定ですが、この場合に気を付けたほうが良いことはあるでしょうか?
A.文化祭において入場料を得ずに上演する場合、脚本をそのまま上演するのであれば、著作権者の許諾は不要です。他方で、改変を行う場合には、著作権者の許諾を得る必要があります。
◎文化祭での演劇の上演
演劇の上演を行う場合には、「上演権」(著作権法22条)を侵害するかが問題となります。この場合も、Q30で扱った録画したテレビ番組を授業で上映する場合と同様に、著作権法38条1項により、営利を目的としない上演として、著作権者の許諾を得ずに行うことが可能です。要件として、①営利を目的としないこと、②観衆から料金の支払いを受けないこと、③上演等について実演家等に報酬が支払われないことが必要となりますので、一般的に小学校から高等学校までの文化祭で生徒が上演する入場無料の演劇を行う場合には、著作権者の許諾は不要であると考えられます。
他方で、大学の演劇サークルの上演などで、鑑賞に料金の支払いを受ける場合や、プロの役者を出演させたり演出家を付けて対価を支払う場合には、やはり許諾が必要になりますので注意が必要です。
また、演劇部が演劇の大会に出場する場合には、大会の主催者が著作権に関する規約を設けている場合がありますので、それに従ってください。
◎脚本の改変
脚本を短くするために一部を省略する場合には、著作者人格権のうち「同一性保持権」(著作権法20 条1項)が問題になります。著作権法20 条1項は、「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」と定めています。脚本の一部を省略する行為は、意に反する切除として、同一性保持権の侵害に当たると考えられます。そのため、著作者に対し、省略する部分を明示して許諾をとる必要があります。
また、脚本の一部を省略するだけでなく、結末を変えるなど、新たなストーリーを付け加える場合には、「翻案権」(著作権法27 条)が問題となります。著作権法27 条は、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と定めています。脚本の一部を省略する場合には翻案には当たりませんが、既存の脚本に新たな表現を付け加える場合は翻案に当たるので、翻案について著作権者の許諾を得る必要があります。
◎著作者と著作権者
なお、著作者人格権は第三者に譲渡することができませんが、著作権(著作財産権)は第三者に譲渡することができます。そのため、著作権(著作財産権)が譲渡された場合には、著作者人格権を有する著作者と、著作権(著作財産権)を有する著作権者が異なる場合があり
ます。それぞれの根拠となる権利に基づき、権利者に対して許諾をとる必要がありますので、脚本の発行元に確認のうえ、許諾をとるよう注意が必要です。
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