ハラスメント防止措置の内容 - 早稲田リーガルコモンズ法律事務所

Types of harassment & the prevention obligations imposed on employers

ハラスメントの類型と
事業者に課される防止義務

Sexual Harassment

セクシュアルハラスメント

男女雇用機会均等法は、性的な言動(セクハラ)に対する対応により労働者が労働条件上不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることがないよう、事業主に次のような雇用管理上必要な措置を講じる義務を課しています(男女雇用機会均等法第11条、平18.10.11厚労告615号、平28.8.2厚労告314号改正)。事業主がこれらの防止措置義務に違反した場合、厚生労働大臣による行政指導や、企業名の公表などの対象になります(男女雇用機会均等法29条、30条)。

周知・啓発

セクシュアル・ハラスメントに関する方針を明確にし、従業員に対して周知・啓発を図ること

事実関係の確認・対処

労働者から相談があった場合に、事実関係の迅速かつ正確な確認および適正な対処をすること

体制の整備

労働者からの相談に対して適切かつ柔軟に対応するための体制を整備すること

プライバシー保護・不利益取扱いの禁止

プライバシー保護のために必要な措置、相談者・事実関係確認の協力者に対する不利益取扱いの禁止等​

Pregnancy Discrimination・Caregiver Discrimination

マタニティハラスメント・ケアハラスメント

2016年の育児・介護休業法や男女雇用機会均等法等の改正により、妊娠、出産、育児休業・介護休業等の取得を理由とする上司・同僚等による就業環境阻害行為(いわゆる「マタハラ」や「ケアハラ」)の防止について、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました(育児介護休業法25条、男女雇用機会均等法11条の3)。これらの措置には、派遣労働者に対する派遣先事業主の措置も含みます(労働者派遣法47条の2・47条の3)。

事業主に対しては、セクハラ対応指針と同様の措置を採るよう、具体的な指針が定められています(平28.8.2.厚労告312号、平21.12.28厚労告509号(平29.9.27厚労告307号改正))。

Workplace Bullying

パワーハラスメント

2019年5月に成立した改正労働施策総合推進法により、パワハラを防止するために雇用管理上必要な措置を講じることが、事業主に法律上義務付けられました。

この法律では、パワーハラスメントを、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定義したうえで、セクハラなどと同様の防止措置を講じることなどが事業主に対して義務化されました(改正後労働施策総合推進法30条の2、令2.1.15厚労告5号。大企業は2020年6月1日から実施)

Academic Harassment

アカデミックハラスメント

アカデミックハラスメントについては法律上の定義はありませんが、一般的には、「研究教育に関わる優位な力関係のもとで行われる理不尽な行為」とされています(特定非営利活動法人アカデミック・ハラスメントをなくすネットワークの定義参照)。

過去の裁判例では、大学側は、所属する学生に対し、安全配慮義務の具体的内容として、「アカデミックハラスメント行為が発生する以前においては、①アカデミックハラスメント行為の防止のために教職員に対する教育・研修を実施する義務があり、また、実際にアカデミックハラスメント行為が発生した後においては、②被害を申告してきた被害者の言い分に耳を傾けて誠実に対応し、③被害者の学習環境が損なわれることのないように配慮をし、④事実関係を調査して適切な時期に被害者に報告するとともに、⑤加害者によるさらなる加害行為を防止する義務を負っている」と判示しています(神戸地裁姫路支部判平成29年11月27日判タ1449号205頁)。

現在では多くの大学が独自のアカハラ防止規程を策定し、相談センターなども設置していますが、具体的に発生したケースへの対応が適切であるかどうかについては、常に検証が必要です。

SOGI harassment

SOGIハラスメント

恋愛対象となる人の性別(性的指向:Sexual Orientation)や、自分がどの性別かという認識(性自認:Gender Identity)に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること、差別を受けて社会生活上の不利益を被ることなどを指し、「ソジハラ」と読みます(「なくそう!SOGIハラ」実行委員会の定義参照)。

男女雇用機会均等法第11条を受けて定められたセクハラ防止指針(平18.10.11厚労告615号、平28.8.2厚労告314号改正)では、被害者の性的指向や性自認にかかわらず、「性的な言動」であればセクハラに該当するとされ、また、国家公務員を対象とした人事院規則の運用においては、「性的な言動」には性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動も含まれることが明示されています(人事院規則10-10)。

さらに、改正後労働施策総合推進法を受けて制定されたパワハラ防止指針においても、「性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」がパワハラに該当する旨が規定されました(令2.1.15厚労告5号)。 今後は事業主に対して、セクハラやパワハラなどと同様、必要な防止措置を講じることなどが義務づけられます。

Montesquieu