刑事手続とGPS - 早稲田リーガルコモンズ法律事務所
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趙 誠峰
趙 誠峰

刑事手続とGPS

犯罪捜査におけるGPSの利用とプライバシー 

 いまやGPSは私たちにとって身近なものになっています。スマートフォンにも当然のようにGPS機能がつけられ、地図アプリを使って待ち合わせ場所に行ったり、タクシーアプリでタクシーを呼んだり、GPSは私たちの生活から手放すことのできないものとなりつつあります。
 このようなGPSですが、その精度の高さから、最近では刑事手続のさまざまな場面でも用いられようとしています。例えば、犯罪捜査の場面で捜査対象者の行動を把握するために、捜査対象者に車に無断でGPSのチップがつけられ、捜査機関によって行動が監視されるということがあります。
 このような捜査手法については、最高裁判所によって「個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものであり」、「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」とされています。
 つまり、捜査機関が勝手に捜査対象者の車などの所持品にGPSチップをつけて行動を監視することは違法であり、捜査の必要があるときは裁判所に令状を求めなければならないとされました。

GPSを用いた捜査の事例と今後

 最近は、捜査対象者から押収したスマートフォンを解析し、スマートフォンに残されているGPS行動履歴から捜査対象者の行動を分析する捜査が行われているようです。捜査機関に対して提供することを承諾していないスマートフォンのGPS情報を捜査機関が勝手に分析し、この情報をもとに行動を分析することは、これまた違法の可能性がありそうです。
 また、性犯罪を繰り返してしまう人など、刑務所から出所した後に再犯のおそれがある場合に、一定期間GPSチップが入った器具を装着させて、その行動範囲を把握しようとする動きもあります。
 あるいは、保釈の際に、逃亡等を防止するために保釈された人に対してGPSチップが入った器具を装着させて逃亡を防止するというアイデアもあります。これらはいずれも外国では実施されている例があるものです。日本でもこれらを導入すべきかどうか今後議論が本格化しそうです。
 GPSなどの最新技術は私たちの生活を豊かにする一方、私たちのプライバシーが警察などに監視される非常に恐ろしい側面があります。きちんとしたルールに基づいて用いられなければならず、私たち弁護士は、警察などの捜査機関がきちんとしたルールに則って用いているかどうか厳しい目でチェックする必要があります。

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趙 誠峰
趙 誠峰

弁護士になって以来、刑事弁護を中心に力を注いできました。裁判員裁判も多数経験しています。刑事事件は常に困難な事件です。このような刑事事件の弁護をする中で培ってきた、どんな困難な事件でも最後まで粘り強く寄り添う力は他の分野の事件にも通じるものがあると自負しています。

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